WEB2.5という、Web3と少し違うポジションについて
2022年4月ごろから、日本でも聞くキーワードになってきた「Web3(WEB3.0)」。
中身はクリプト、仮想通貨のリブランディングで、ブロックチェーンの技術を用いて、金融、アプリ、組織の運営を自動化できるというものです。
しかし、ユーザーの需要を考えると、急にWeb3事業を作ったり、それを普及させるのは難しいかもしれません。「DAOを作ろう」「NFTマーケットプレイスを作ろう」という動きを見たり、経営者と会話する中では、WEB3.0というよりは、”WEB2.5″くらいでブロックチェーンを取り込んだ事業の立ち上げや、事業構想の需要があると感じました。
そこで、今回の記事では、「WEB2.0」と「WEB3.0」の間に位置する「WEB2.5」について、そのポジションや可能性について考えていきたいと思います。
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WEB3.0とは?
ビットコインの構想から生まれた、ブロックチェーン。
ビットコインでは仮想通貨のやり取りだけでしたが、「ノード」の存在により”現実的には改ざん不可能な記録”を残すことができるそのテクノロジーは、イーサリアムにおいて、「スマートコントラクト」というプログラムを改ざん不可能な形で動かすことができるようになりました。
スマートコントラクトにより、政府や企業といった、”権力をもつ中間”がいなくても、人々はトラストレスにデジタル上で相互なやり取りが可能になります。
- 国家に通貨の価値を保障され、貸したお金が帰ってくるという信用がある、銀行。これが、ブロックチェーン上のスマートコントラクトに中央が代替され、DEX(分散型取引所)に。
- 仕事内容や給与を決定し、”労働 to Earn”の仕組みを用意した、株式会社。これが、スマートコントラクトに役員を交換され、DAO(自律分散型組織)に。
- 右クリックでコピーできるが故に、”ホンモノ”のデータに価値がなくなってしまったインターネット。ブロックチェーンにより認証を与え、データに価値を生み出したのがNFT。
- これまでもあったデジタル空間上に、NFTにより「偽物のコピー品はダサい」という概念を与え、デジタル空間上に経済圏を与えたのが、Web3のメタバース
このように、ブロックチェーンにより中央の組織やアプリを代替したり、デジタル空間上に経済圏をもたらせたのがWeb3です。
Web3に関して、詳しくは下記の記事で見ていただく形とし、先に進みます。
» WEB3.0とは?WEB2.0の課題と、これからの世界について
WEB3.0の課題
「組織のDAO化」と「自己責任の世界」という観点で、難しいところがあります。
組織のDAO化はハードルが高い
先述のように、スマートコントラクトにより人間を不正不可能なコードに置き換えることができるようになったWeb3ですが、導入へのハードルがあります。
- 組織のDAO化には、仕事内容と報酬設計までスマートコントラクトに規定が必要
- 自律的にDAOが運営されていくためには、トークノミクスのインセンティブ設計が重要
“Play to Earn”(P2E)のブロックチェーンゲームは、比較的スムーズにWeb3化したのですが、特にDAOではWeb3化のハードルが高いです。
リアルビジネスをDAOによって運営する取り組み
特に、リアルビジネスをDAOによって運営するような取り組みは、まだよちよち歩きの赤ちゃん状態です。下記ツイートをご覧ください。
3/n. “カフェDAO”が実店舗のDAOモデルをテスト
— KOYA@Crypto (@thor_ind) May 7, 2022
・顧客と従業員には、「コーヒートークン」が付与される
・トークンは、投票と割引に使える
・まだトークンはブロックチェーンに接続されていない
ついに、オフラインビジネスをDAOで運営する実験が開始されました🤯https://t.co/R5vkV5a2Gn
“カフェDAO”がオフラインの店舗をDAOによって運営しようとしているテストです。
店員はDAOメンバー、誰でもDAOに入れ、1種類のメニューを販売。顧客と従業員には、「コーヒートークン」が付与され、トークンはDAOにおける投票やコーヒーの割引に使えます。
しかし、まだ、トークンはブロックチェーンに接続されていなかったり、店舗の運営資金を資金調達できていないなどといった課題もあります。
Web3(クリプト)は自己責任の世界
さらに、ブロックチェーンの世界は、自己責任の世界です。
WEB1.0の頃と同じで、お問い合わせすれば問題に対処してくれる運営企業がいません。
WEB2.0で運営が助けてくれた事例
- スパムに絡まれた→運営に報告して対処してもらえる
- パスワードを忘れた→運営が解決を手助けしてくれる
- システムの使い方がわからない→運営がメールで教えてくれる
改めて文字に起こすとわかります。「中抜きしている」として批判される中央も、ユーザーサポートの点では大きな価値を作っていました。
WEB3.0(クリプト)の世界では
- ウォレットのパスワードをなくした→デジタル上の資産(仮想通貨・NFT)の紛失
- トークン送付のアドレスを間違えた→資金の紛失
- 詐欺サイトにウォレットをconnectしてしまった→ウォレットの中身喪失
- ビジョンに共感してトークンを買った→詐欺プロジェクトで資金を持ち逃げされた
このような世界であり、知識が少しでも不足すると詐欺に遭います。
クリプトの世界では、日々「ハッキングされた」「ラグプル(資金の持ち逃げ)された」という報告をTwitterで観測します。
その一方で、「アクシーで億り人」「STEPNで家が建つ!」という報告もあり、それまで既得権益を持たなかった人が財を成すこともあります。
先日、「クリプトデバイド」というクリプトリテラシーの障壁に関する記事を書きましたが、まさにクリプトデバイドの手前と奥で人生の過ごし方が変わる世界になってきています。
» クリプトデバイドとは?Web3時代に出現する新しい障壁について
そこで、「WEB3.0」の手前に位置する、「WEB2.5」を見ていきます。
WEB2.5とは何か?
一言でいうなれば、”ブロックチェーン技術を使っているものの、中央集権の性質が強いサービス”です。楽天NFTなど、パブリックチェーンではない、プライベートチェーンのサービスなどが該当します。
WEB2.5のポジション
イーサリアムにより非中央集権で自律運営されるDAOは、完全な「WEB3.0」といえるでしょう。
しかし、DAOと称して”DAOを目指している段階”のコミュニティは、スマートコントラクトにより意思決定や報酬の支払いが自動化されていないため、「完全なWeb3の組織」とはいえない状態です。
しかし、実際に経営者と話していると、”純度の低いWEB3.0″、すなわち「WEB2.5」にも需要を感じます。
WEB2.5といえる、楽天NFTの事例
1〜2ヶ月ほど前に楽天が「楽天NFT」を公開しましたが、こちらは完全なパブリックチェーンではなく、中央集権なブロックチェーンです。
「NFT」と名前に入っていますが、イーサリアム対応のOpen Seaで買うようなNFTではありません。楽天のサーバー内だけで見れて、楽天の外には持ち出せないNFTです。もはやETHを用意する必要すらなく、日本円で購入することができます。
発表を見たときは、「他のプラットフォームで見れない・使えないNFTって、僕らの知ってるNFTではなくない?」と思いました。
しかし、皆がみな、ブロックチェーンに慣れているわけではありません。アドレスを間違えたら自己責任で資産がなくなるのがクリプトの世界。そんな世界の入り口としては、このような”純度の低いWEB3.0″もありだと思いました。
日本円で購入でき、楽天がユーザーサポートをしてくれるので、クリプトの裾野を広げる役割を担ってくれるでしょう。楽天なので、ウルトラマンのような、大手IPともコラボできました。
これがまさに、”WEB2.5″といえるもので、これくらいの”純度の低いWEB3.0″にも現時点では需要があるのも事実です。
ブロックチェーンは”X to Earn”から社会を変える
上記WEBサービスにおけるWEB2.5と違う流れで、人々の生活にブロックチェーンが浸透し始めています。僕はこちらの流れがYouTubeなどのSNSとも相性が良く、圧倒的に強い流れで人々をクリプトの世界に巻き込むと思っています。
すでに、STEPNでその予兆が見えます。
「現金化可能なトークン」というインセンティブが、これまでブロックチェーンや仮想通貨とは無縁だった人、仕組みを理解していない人も大勢クリプトの世界に引き込みました。これが日本だけでなく、世界中で起こっています。
“X to Earn”のXには、「第2のSTEPN?Sweatcoinについて解説!」の中で触れましたが、社会課題解決のための行動を入れることもできます。
そのため、リテラシーの高い層はX to Earnから、クリプトデバイドが難しい層はWEB2.5からWEB3.0の世界に入ってくる流れでWeb3が一般に普及してくると考えます。
すると、2022年において、日本の起業家は「WEB2.5のサービス」も事業アイデアとして考える価値があるでしょう。今後もクリプト業界にコミットし、動向を追います。
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