Nouns DAOの魅力を分析してみた【80億円の行く末とは】

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CryptoBellでWeb3に関する動向を扱っている、KOYAです。

この記事では、2022年4月現在、「最先端のNFT」として知られるNounsに関する情報をまとめます。

  • 毎日1体発行され、自動でオークションで落札される
  • 売上はトレジャリーに入り、運営ではなくNFTホルダーが資金の使途を決める
  • 80〜90億円という資金がトレジャリーにプールされている

Nounsは完全に民主主義な組織であり、既存のNFTとは一線を画すプロジェクトです。どういう経緯で誕生したのか?プロジェクトの方向は今後どうなるのかなど、気になる点が多いです。

また、Nounsの行く末を決定する”Nouns DAO”は、誰でも提案を見ることができます。したがって、今後DAOの運営を考える人にとっては、コミュニティ運営も参考にすることができます。記事の中では、どのような提案がなされているかも見ていきます。

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Nounsとは?

2022年4月時点では、最も先進的なNFTプロジェクトです。NFTが毎日一つ自動生成され、オークションに掛けられます、売上はNFTホルダーがDAOとして使途を決定します。プロジェクトの仕組みや方向性が、業界で大きな注目を集めています。

Nounsの概要

Nounsの概要については、公式サイトの英語を要約していくと理解しやすいです。

Nouns are an experimental attempt to improve the formation of on-chain avatar communities. While projects such as CryptoPunks have attempted to bootstrap digital community and identity, Nouns attempt to bootstrap identity, community, governance, and a treasury that can be used by the community.

https://nouns.wtf/

要約します。

CryptoPunksは、デジタルコミュニティとアイデンティティの2つを自動運用しようとしました。Nounsは、それらに加えてガバナンス、およびコミュニティが使用できる財務もDAOにより自動運用しようとしているプロジェクトです。

特徴を下記にまとめます。

  • パブリックドメイン
  • 24時間ごとに、NFT1体が発行され、自動でオークション出品
  • NFT売り上げの100%がトレジャリーへ
  • 1つのオークションが決済されると次のオークション開始
  • すべてのNounsがNouns DAOのメンバー
  • Compound Governanceを用いて議決
  • 1つのNounsが1票に相当
  • トレジャリーの資金は、Nounsの投票により運営
  • NFTアートはオンチェーンであり、IPFSではない
  • 多くのジェネラティブNFTとは違い、属性にレアリティはなく、すべて平等
  • Noundersは、最初の5年間、Nouns供給の10%をNouns(NFT)の形で受け取る

これらが、Nounsの特徴です。

Nounsは、自身のNFTプロジェクトに関する専門用語もあるので、次で説明します。

Nounsに関する用語

  • Nouns:NFTアートのことであり、本プロジェクトの総称でもあり、NFTアート所有者のことも指します
  • Nounsers:Nouns10人の創業者。NounsとFoundersを掛けた用語
  • トレジャリー:Nounsプロジェクトの資金が入っている、コミュニティ共通のウォレット
  • パブリックドメイン・CC0:著作物について知的財産権がない、または放棄している状態
  • (NFTアートにおける)オンチェーン:画像のURLをNFTにするのではなく、画像そのもののデータをブロックチェーン上に乗せていて、”NFTの純度が高い”状態のこと
  • ジェネラティブNFT:コンピュータでパーツを組み合わせて数千〜数万枚を自動生成するNFTアートのプロジェクトのこと
  • Compound Governance:ブロックチェーン上の投票システム。スマートコントラクトによって動作
  • Multisig(マルチシグ)のアドレス:マルチ・シグネチャーの略。送付のために複数人の電子著名を必要をするアドレスのこと

なお、前提となる”Web3″については、下記の記事で説明しています。
» WEB3.0とは?WEB2.0の課題と、これからの世界について

これらを抑えた上で、特徴を一つずつみていきましょう。

Nounsの特徴

Nouns

永久に毎日オークションが行われていること

Nounsでは、毎日自動でNFTが生成され、そのNFTは毎日永久にオークションにかけられます。

例えば、この記事を書いている2022年5月4日は、「295体目」のオークションが行われていました。1年後には、これがもう365体増えた状態になり、10年後にはおよそ3,650体増えた状態になります。

オークション収益はETHで上がり、そのすべてがコミュニティの共通ウォレット(トレジャリー)に入ります。そのため、「どこにも売上がつかない」という点も興味深いです。

Nouns DAOの存在

Nouns DAOは、Nounsプロジェクトの方向性を決める運営です。中央集権な”会社”ではなく、中央がスマートコントラクトになった”DAO”により、プロジェクトは運営されます。

Nouns DAOのメンバーは各Nounsで、それぞれ1票の投票券をもちます。そして、投票によりDAOは運営されます。資金の運営方針やプロジェクトの行く末まで、決められるはずです。

なお、Nounsの供給が少ないときに、悪意ある投票が通過しないよう拒否権がNounsに与えられています。明らかに有害な提案が可決された場合に使われます。

フルオンチェーンNFTであること

NFTアートは、イーサリアムのブロックハッシュに基づいて、ランダムに生成されます。

また、下記のパーツで構成されます。

  • 背景:2種類
  • ボディ:30種類
  • アクセサリー:137種類
  • 頭:234種類
  • メガネ:21種類

これらのパーツの組み合わせで作られたNFTアートが、イーサリアムに直接保存されます。CryptoPunks同様の、”純度の高い”NFTとなっています。

NFTを保有していなくても提案可能

Nounsで行われている提案は、誰でも公式サイトのフォーラムより閲覧・議論可能。

Nouns proposal

投票はNFTホルダー(Nouns)しかできませんが、アイデアを投げることが外からでもできる仕組みです。

1体あたり2,000万円以上の価格で取引されること

NounsはBAYCと並んで成功しているNFTプロジェクトですが、なぜこんなにも値がつくのでしょうか。Noun #1は、執筆時のレートで2.28億円で落札されています。

BAYCは中央集権で会社による運営。NounsはDAOとしての運営で、超極端のプロジェクトがNFTのトップとして肩を並べています。

Nounsの魅力は、BAYCの魅力とは異なります。
BYACは、ネイマールやセリーナ・ウィリアムズといったNFTホルダーが有名なセレブやスポート選手であること、コミュニティの盛り上がりが魅力です。一方で、NounsはNFTの生成からオークション、運営までのそのすべてが自動であるという社会的実験であるということが人を惹きつけています。

“思想”が一番の強みなのがNounsです。

売上がすべてトレジャリーに入ること

AIにより発行され、販売され、共有ウォレットにプールされた資金は80億円を超えるといいます。

もはや、会社でも80億円も調達できるところは少なく、日本だと上場目前の会社レベルではないでしょうか。

その上、売り上げはBAYCのように運営会社に入るのではなく、ホルダーによるプロジェクトの資金調達というのが実態です。

CC0(パブリックドメイン)であること

NounsはCC0、あるいはパブリックドメインと呼ばれる「著作物について知的財産権がない、または放棄している」プロジェクトです。

これまでのIP、ポケモンやミッキーには知的財産権があります。勝手に運営会社以外の組織がIPを利用した商品を開発・販売することはできませんでした。しかし、CC0なら公共財です。

誰でもNounsのキャラを使ったアイテムをつくることができます。下記Pajiさんが例です。

Nouns DAOでは、どんな提案がされているか

Nouns DAO 提案

記事執筆時点(2022年5月6日)で、Nouns DAO何のフォーラムで提案されていたものは、以下のようなものです。

  • メガネ(⌐◨-◨)アイテムの製造について
  • Nounsアートスタンドについて
  • 世界中の中小企業とのコラボプロジェクト
  • 世界中にもっとNounsファンを増やせる、NounsコラボのNFTプロジェクトの制作
  • カーレースのスポンサーをしないか
  • メンタルヘルス領域で活動する他のDAOへの支援
  • イーサリアム上のNFTプロトコルVerseへの出資検討
  • Nounsを使った、マリオのようなオンチェーンのレトロゲームへの出資検討
  • トレジャリーのETHの運用方法
  • Nounsを紹介できるドキュメンタリー映画の制作

ブロックチェーン上に新しくできる、新規プロジェクトへの出資検討は多かったです。

そのほか驚いたこととしては、オフラインアイテムを製造し、世界のホルダーに発送しようと提案している人もいたことです。

このように、Nouns DAOでは外からでもDAOの中身が見れます。これからDAOを作ろうと考えている人にとっては、フォーラムの中でどのような提案がなされていて、どうリアクションされているかみることで、今後の活動につながる知見が得られるでしょう。

Nounsは誰が作ったのか?持ち主はいるのか?

10人の創業者は下記の方々。

彼らに、最初の5年間は#0、#10、#20、、、#50などの10番目のNounsが自動的に付与されます。

すなわち、NoundersはNounsを売却することで収益化できます。

しかし、売ってしまうと投票権を失うほか、プロジェクトの信頼も失うことがあります。なので、むやみに売却はできないでしょう。

NounderへのNFT配布は、直接Multisigのアドレスに送信される仕組みとなっており、不正は起きづらいです。

Nouns DAOを購入した日本人の事例

Voicyパーソナリティの中島聡さんが、日本人でNounsを購入しています。

有料メルマガの中でもクリプトへの疑いの心を持っていることを明かしていた中島さんですが、今回はなかなか挑戦的な購入をされました。

購入の意図としては、下記のような考えがあったそうです。

  • DAOについて深く知るために、自らDAOに参加したかった
  • 資産を一部クリプトにしたかった。しかし、FTでは面白くないので、Nounsに行き着いた
  • CryptoPunksやBYACは投機だと感じる
  • Nouns DAOは、22,671ETH(75億円)の資産を持っているので、安心して投資できると感じた
  • 過去にAppleやMicrosoft株を10年、20年ホールドしたように、Nounsも長期保有の予定

一方で、CryptoPunksを2体・BAYC1体を所有する日本人、イケハヤさんは「80億円ものコミュニティ資産が活用されていない」という考えでNounsには投資していません(記事公開時点)。

Nouns DAOのトレジャーリーに貯まる資金の使途は?

イケハヤさんは、Nouns DAOが資金を有効活用できていないことを指摘しています。

Nouns DAOにおいて投票権を持つNounsホルダーは、記事執筆時点で300人近くいらっしゃいます。来年には600人を超えます。人数が増えれば増えるほど、投票における意思決定が難しくなるという課題があります。

現段階では、ETHを「stETH」として運用していて、安全重視な運用です。Nounsに魅力を感じるような、普段からDEXなどをいじっている方々には物足りない運用だといえます。

「2,000〜3,000万円払って年金運用する」状態です。

Nounsの課題は?

これらから見えるのは、Nounsには「ビジョン、方向性がない」という課題です。

Nounsの公式サイトをみても、NFTの生成〜オークション、トレジャリーとDAOによる財務の運営がウリであり、その先の方向性、資金の使途についての言及はありません。

そのため、DAO参加者に共有の目的意識や目標が生まれづらいのではないかと推測できます。最先端のプロジェクトながら、ここが惜しいところです。

イケハヤさん含め、人によっては「最終的に、Nouns DAOはホルダーに資金を返還し、プロジェクトを畳むのでは?」と予測している方もいます。

いずれにせよ、Nouns DAOはWeb3における歴史的なプロジェクトです。どのようなポジションに落ち着くかはわからないですが、今後も行く末を見守っていきましょう。

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